この記事では、私Tyu-genが国家公務員Ⅰ種試験に最終合格するに至るまでの日記をまとめておきます(構成上若干の改変がある)。 最終合格というのはあくまで試験に合格しただけであって就職内定というわけではありません。本当にシビアなのはこれからであることは強調しておきます。
とはいえ試験も一般的には難しいと言われており、私の場合は周囲に参考になる人がいなかったので当初は手探りで途方に暮れました。結局誰も参考にせず独学を貫き通したのですが、スタイルを確立するのに随分時間がかかったなぁと思いました。
人によってスタイルは違うものなので何とも言えませんが、参考程度にはなるかと思うので推奨できる勉強方法と試験対策を最後に付記しておこうかと思います。
先日2008年10月18日、中央省庁主催の技術系公務員の省庁セミナーが大阪中之島でありましたので足を運びました。大阪で開かれるのは史上初だったようです。
一般に技術系公務員は技官として業務を行うか、あるいは、研究官として研究を行うかのいずれかであると言われますが、今回のセミナーの感触としてはほぼ技官だと考えてよいでしょう。
例えば厚労省技官による医薬食品安全行政では、リスクコミュニケーションとリスクマネジメントがメインであって、リスクアナリシスに関して専門研究することは無いようです。厚労省関連機関には国立医薬食品衛生研究所がありますが、技官がここに出向したとしても自らが研究するわけではなくマネジメントに携わります。リスクアナリシスの根幹である科学的評価の現場を見ておくことに意義があるとのことでした。
なお、国立研究機関は学位取得者を任期制で採用し、実績如何で常勤採用するのが一般的のようです。
ところで、学位取得者の研究機関採用については例外があり、国税庁は国Ⅰでも希望すればほぼ間違いなく研究官になれるみたいです。国税庁に技術系採用(しかも理工Ⅳ;生物-化学-薬学系)があること自体驚きですが、この認知度の低さが研究官採用を促進しているらしいです。主な業務はガソリン税と酒税に関連して、ガソリンと酒の成分分析を実施することのようです。また、成分分析に留まらず酒類総合研究所では酒の醸造に関する研究を行っており、日本農芸化学会などの学会での発表を行っているようです。高学歴の傾向性を有するライフサイエンス系の学生にとっては、国税庁技術系は実は穴場だと思います。
さて、話は変わりますが、同一の問題に対して各省庁の打ち出す政策には各省庁のカラーが反映されています。
例えば環境問題。環境省の根幹は徹底的に地球を保全するところにあり、経済発展に関しては規制的のようです。つまり特定の国家や団体の利益より、とにかく地球を守ることが重要と考えます。これに対して、経済産業省では所謂「持続可能な開発 (Sustainable Development)」が根幹にあります。「各国が環境保全へ取り組む最大のイニシアティブとなり得るのは経済発展である。というのも、多様な価値的対立のある中では、経済発展が唯一統一的枠組みを構成しうると考えられるから。」という趣旨の文章を読んだことがありますが、経済産業省のスタンスはほぼこのようなものだと考えて差し支えないでしょう。
また、学術振興の問題については文部科学省は大学寄りで「研究者」という人を見ているところがありますが、経済産業省は社会寄りで「国際競争力としての技術開発」という実益を見ているところがあります。
その点、経済産業省の学術振興では理系こそ見てはいますが文系は蚊帳の外だと思われますので、文理ひとくくりで「研究者」を見ようと思ったら文部科学省が良いと思われます。
このように同じ問題でも省庁ごとにアプローチが異なるので、自分の立ち位置と相談して希望省庁を決める必要があります。わたしはやはり文部科学省だなぁと思いました。
文部科学省では研究者とコミュニケーションできなければならないので必然的に勉強しなければならないとのことでしたが、むしろ勉強したいぐらいなので望むところですし、「大学教育」と「大学院研究」の双方を活性化できたらと考えていますので。(現在文科省の言うところの「大学院教育」重点化には反対です。改善する余地があります。)また、国公立大学への出向もありマネジメントに関わる一方、場合によっては自分で研究室を持って教職に就くこともあるみたいです。
さて
セミナーとは言え各省庁から人事の方が出向かれているところをみると、すでに採用の前哨戦だと考えるべきだろう。従ってセミナー終了時に個人的に話を吹っ掛けに行くのは極めて有益な行為であり、大学主催の小規模な省庁セミナーにも足しげく通うことが重要であると考えてよいだろう。
(将来的に人材を獲得しなければならない以上、これは公務員に限定されることではなく、セミナーを開催しているどの会社であっても一般的に成立するものと考えられる。)
今回は各省庁への入省入庁後のキャリアと仕事の方向性をメインに確認した(つまり「仕事場」を確認した)。次回は省庁内でのプロジェクトの進め方(予算、企画、調整、実行)、日常勤務の様子(デスクワーク、会議、交渉、研修等の日常的比重)、省庁の担当管轄に由来するプロジェクト上の制約について確認する必要があるだろう。つまり、「仕事場での仕事」の確認である。(「仕事場での人」については次々回か、もしくは次回。)
最近は既に体系化された学問を、検証なしに頑張って覚えるしかないような生活をしているので、どうもリアリティーに欠ける。
例えば有機化学。ペリ環状反応でHOMOとLUMOの相互作用が云々…とある。紙面上でπ電子軌道をグルグルいじって生成物の立体特異性を決定するような問題をいそいそと解いてみる。面白い。だが、リアリティーに欠ける。
例えば物理化学。定常状態近似を用いて反応速度式を解いてみる。うん、HBrのラジカル反応は複雑怪奇だ。面白い。だが、リアリティーに欠ける。
例えば世界史。謎に知識が増える。「大航海時代というのは西洋における大航海時代だよなぁ。明の鄭和は大航海時代以前に大航海しているし…。」面白い。だが、リアリティーに欠ける。
例えば日本史。マジックアカデミーですら問われないであろう知識が増える。「1900年に義務教育期間が尋常小学校4年までになり、授業料が無料になったらしい。1902年にはこの国の就学率は9割を超えたのか。ふむふむ。」面白い。だが、リアリティーに欠ける。
勉強は面白いが、研究の方が面白い。
地図を覚えるより、山の中であれやらこれやらと遭難している方が面白い。
哲学についてはいつも遭難しているような気がするから、リアリティーがある。
遭難しましょ。そうしましょ。
黙々とただ歩く。
それ以上の言葉が空虚になる。
そのような生活。
国家公務員Ⅰ種の一次試験が憲法記念日に終了。可もなく不可もなく、合否は五分五分でしょう。
教養試験は集合09:00、解答09:20~12:20。専門試験は集合13:15、解答13:30~17:00。ほぼ丸一日拘束されました。
スーツを着て行ったら少数民族だったなぁ。昼休憩がほとんど無かったなぁ。常にトイレが込み合っていたなぁ。わたしを含め、大型連休中にこんなにも暇な人たちがいるのだなぁ。
うんうん。
教養試験では、日本史、世界史が過去問傾向と異なり見事に撃沈しました(計5 問中自信を以て解答できたのが世界史の中東王朝変遷史1問のみ)。よってその1問を除いて全て棄却しました。
幸い日本史世界史が解けなくても数学、物理、化学、生物、思想、芸術、政治、(無勉強の)経済、社会はボチボチ解けたので問題なく選択解答に必要な20問を確保できてしまいました。
文章読解では腐るほど英語を読みました。読もうと思えば1時間で相当な文量読めるのだなぁと思いました。
数的判断推理はなんのことやら。解けるものだけ解いてばっさりどっさり捨てました。羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶般若心経~(ぎゃていぎゃていはらぎゃていはらそうぎゃていぼじそわかはんにゃしんぎょう~)。
専門試験では過去問で7~8割解けた科目(基礎物理化学、有機科学、生化学)のほとんどで躓きました。そのほとんどで「5択ある選択肢の最後2つのうち、どちらを切ったらよいのだ。」という状態になってしまったので、これらは5割程度でしょう。
過去問でネックになっていたのは食品学でした。逆に食品学さえ解けるようになれば飛躍的に正答率が上がるとも言えるので、試験の1週間前に参考書(東京化学同人『食品学 食品成分と機能性』2008:昔、食品学の教科書を腐るほど調べたことがあるが、わたしはこれが最新最高の教科書だと思う。食品学に興味がある人には心から薦める。)を購入して300ページを3日で読破したのですが、これも最後は五分五分のジレンマに陥ったので5割程度でしょう。(とはいえ昔は2~3割だったので大きな進歩。)
ただ、過去問では変動が激しいので放置を決め込んでいた数学やら化学工学やらが解けてしまいました。
数学は高校で解ける単なる確率と回転体体積の問題でした。
化学工学では、向流熱交換器やらCSTRの設計方程式が出ました。これらはピンポイントで勉強していたところだったので笑いました。
まったく朝からハイテンションだったなぁ。
「あなたは平成21年国家公務員採用Ⅰ種試験の第1次試験に合格しました。」というチラシが入っていました。
「第2次試験(筆記試験)は、下記のとおり行います。」
なんともあっさりした通知書だなぁ。
人事院で一次試験の解答が出ていたので、自己採点なるものをしてみたところ「半々程度の手応え」を裏切っていました。
教養(31/45)、専門(30/40)。約72%の得点率だったようです。(教養では数的判断推理、専門では基礎物理化学がかなり酷い(約3割)ことになっていましたが。)
ちなみに人事院が公開している平均はおよそ、教養(20/45)、専門(18/40)の模様です。ただし母集団が全体なので合格者基準はわかりません。合格者基準では結局「半々程度の手応え」かなぁと思います。
この試験結果で特筆すべきは、過去問でネックになっていた食品学でしょう。半々とか書いておきながら実は満点でした。こればかりは「っふはははー!!Verte(ヴェリテ:真理)!!」と哄笑しました。
さておき、理工Ⅳでは全国で1393人が受験したうち、一次試験で147人に絞られています。競争率は約9.5倍だったわけで、これは例年とほぼ同じ推移をしています。
例年通りの推移をみせるなら、二次試験は約2倍の競争率になるでしょう。数字の上では一次の方が難しそうですが、二次は選抜されてきた中での2倍なので、数字は所詮数字です。
要は、過去問を研究し、弱点分野の全体像を掴んで、問題を解けばよい。それだけでありそれ以上の話です。
そういえば…
これから理工系で院試を受ける方。国家公務員Ⅰ種の専門記述試験に目を通しておくことを薦めます。
誰が作っているのか知りませんが、非常にバランスがよく、示唆に富んだ良質な問題を出題しています。分野の重点と全体像を把握する上では、演習問題集を買うより余程良いでしょう。
(ちなみに人文系の院試ではこれが全く参考にならないと思います。残念ながら。)
国家Ⅰ種試験も残るは面接だけとなりました。
5/24の二次試験は、総合試験と専門記述試験でした。
しかし、どうも性格傾向診断なるものもありました。
試験開始前に、全100問の質問に「はい、いいえ」で回答するようなことをしました。ちなみにマークシートでした。
どのような質問があったのかというと、
「文学が好きだ。」
「政治について語ることが得意だ。」
「人と打ち解けるのが早い。」
「多人数より少人数の方が好きだ。」
「人目が気になる。」
「優柔不断である。」
「空想に耽るのが好きだ。」
「物事を抽象化して捉えるのが得意だ。」
「性的な話で盛り上がったことがある。」
「人の悪口をこれまでに言ったことがない。」
「約束を破ったことはない。」
といった割と一般的なものや、
「いつも虫が飛んでいる。」
「いつも誰かに呼ばれている気がする。」
「死にたいと思う。」
「わたしが理解されないのはわたしの考えが高尚だからだ。」
というような、「はい」と答えたら面白いだろうなぁというものもありました。
極めつけは、
「わたしは神の使者である。」
…即答でした。もちろん「Yes!!」と。
「わたしの説くところは、神の内奥から直接に語りだされた歴々たる真理である。」(エックハルト)
でも、冷静になってよく考えて見れば「使者」ではないので、「いいえ」を選択することにしました。
なんだ、引っかけ問題かぁ。残念残念。
冗談(という本気)はさておき
総合試験は、制限時間2時間で、「行政のあり方に関する次の三つの資料を要約し、求められている行政のあり方、官僚像に関して考えを述べよ。」という、論述ものでした。
正直言って、この問題を作った人は天才だと思いました。バラバラの内容の資料が、どういった根本的な洞察から配置されているのかを考えると、現場の生の声や改革への熱気が浮き上がってくるような問題だったのです。
この問題を解きながら、わたしは公務員やこの国が向ってゆく方向に関して、何かを掴んだような気がしました。
それは、国家公務員として働いている人はあることに非常にうんざりしていて、それをどうにかしたいと考えていて、それをどうにかできる方向も知っていて、そこへ向って、そして、そこから本気で働いていきたいんだ、ということを「洞察させられ」たとも言えるかと思います。
一般的には官僚に対してあれやらこれやら言われているかと思います。しかし、私はまだ安心できると思いました。あれこれあるにしても、完全な機能不全であるわけでもなく、また、内部から変革していこうとする勢いがあるのもまた事実だからです。
現在、国家公務員に限らず公務員は非常に困難な局面をむかえていると思います。「公務員は公務員なんだからいくら叩いても結局は大丈夫だろ?」というようなイメージだけで世論が形成されるのは非常に危険だと思います。「公務員だから安定している、公務員だから身分保障がある、公務員だから職場で専門知識を活かせる。」というのは次第に怪しくなってきています。利権と雑務と無理解が足かせになっているのです。
イメージ上はまだ魅力的だと捉える人が多いかもしれませんが、それで公務員を目指すのはちょっとやめた方がいいかもしれません。
正直、今回受験するにあたって、「現実問題として公務員はこれからどうなるのだろう。」と思うところがあったのです。
しかし、まぁそれでもいいかなぁと。
そうは言ってもやはり、内部で理念を持ってどうにかしようとしている人がいる限り、その組織はやっぱり心底魅力的に映ったのです。
今日は国家公務員Ⅰ種試験、最終合格者の発表日。
どうやら、合格者には人事院から郵便物が届くとのことだったのだけれども、午前9:00からWEB上でも発表をしていたので、いそいそと調べ始めたのであった。
「ああ、なんか見慣れた受験番号がある。」
ということで、最終合格。長かった、長かった。
研究室からの帰宅後、人事院からの封筒がポストにあるのを確認。 綺麗な証明書が入っていた。
本当に合格していて良かったと思う。 今日の結果待ちまで、受験した本人だけが「うーん。どうだろう?専門の生化学が…(南無阿弥陀仏)。」と言っており、何故かその周囲の方々は一様に「合格おめでとう」とか「君が落ちたら誰も受からん」とか「わたし自信ある」とか言っているのだから、「はてな、全く何を根拠に言っているのやら」という心地がしていたのであった。 結果としては、どうやら周りの方々ほうが、本人より的確に状況を把握していたらしい。ある意味それが当然と言わんばかりだよなぁ。やれやれ。
今年できるのはここまで(一般企業ではこれでエントリーシートが通った段階)。来年官庁訪問かぁ。これが一番シビアなのだろうなぁ。
そういえば、もし国Ⅰを受けようという方がいれば、ある程度のノウハウは示せるかと思います。必要なことがあれば、連絡ください。
勉強するにしても、何から手を付けたらよいやらわからない。そこで情報収集のために本屋に行けば、あまたの参考書が並んでいるのをしてうんざりしてくる。
これまでに、このような体験をした人がいるかもしれませんし、ひょっとしたらこれからする人もいるかもしれません。
私は理工Ⅳの試験区分で受験したのでそれに特化した教材を使っています。参考までに、使用教材をラインナップしておきます。
結論から言ってしまえば、太字で示した教材を4~5 回解き直せば十分です。色々手をつけましたが、本当に有益なのは過去問だということです。
(出たとこ勝負)
(面接カードの記入事項の研究)
繰り返しになりますが、とにかく過去問を完璧に解答できるくらいにやりこめばよいです。それが一番効率の良い勉強方法です。
教養の過去問は書店で入手できます。専門の過去問は、行政/法律/経済以外の試験区分の場合、大学、もしくは、情報開示という形で人事院に問い合わせるかをしなければ入手できないと思います(ここで随分手間取った)。
また、残念ながら専門二次試験は解答が無いので、頑張って自分で解答を作成しましょう。
得点の目安としては少し半分を上回る程度
一次教養:27/45
一次専門:25/40
二次専門:60%の得点率
私の場合、総合試験と面接は特にこれといって長期的な対策を立てませんでした。「まあ、そのつど課題に応えればよいのだろう。」と思いながら。
総合試験では、簡単に言えば、2時間かけて「A4用紙の裏表に資料をまとめて提言する」というようなことをしました。時間配分としては、資料を読解して文書の構造を決定するのに30分、残りの時間を記述に充てるようにしました。一見するとバラバラな資料の中で、一貫している主張を見つけ、それを論理的に展開できるかどうかがおそらく鍵だと思います(とても月並みな話ですが)。
面接試験では、事前に面接カードが配布され、所定事項を記入します。面接は完全にそれに沿って20分に渡って行われました。面接官に納得していただけるか、もしくは、面接者が答えが窮するか、のサドンデス的な面接になるので、自分が徹底的に答えられる対象を記入事項として選び、面接カードではその内容をあまり詳しく書かないようにしておくことが大切だと思います。つまり、「その質問待ってました!」という状況を自分で創ることが大切です。面接官に試験されるのではなく、面接官と有益な対話をしにいきましょう。(わたしはとても愉しかった。)